緑ナンバーは、運送業(トラック事業)を行うために必要な法的許可証です。正式には「貨物自動車運送事業許可証」と呼ばれ、トラック運送業者にとって不可欠な要素となっています。この記事では、緑ナンバーの基本的な意義から取得条件、重要性まで詳しく解説します。
緑ナンバーとは?
緑ナンバーは、運送業者が合法的に営業を行うために必要な許可証です。通常、トラックの車両ナンバープレートが緑色であることから一般的に「緑ナンバー」と呼ばれています。
ナンバープレートと言えば自家用車に付いているものをイメージしやすいですが、そちらは「白ナンバー」と呼ばれるケースが多いです。
そのため『自家用車は白ナンバー、事業用車は緑ナンバー』と認識しておくと分かりやすいです。
どんな時に緑ナンバーが必要?
しかし、街中を走るトラックを見ていると白ナンバーのトラックも見かけることもあります。何が違うのでしょうか?
【緑ナンバーのトラック】
- 物流業者や運送会社として何かを運ぶ時
- 顧客の荷物を受け取って配送を行う時
- 建設業者が建築資材を運ぶ時
- 事業として農業を行う農家が収穫物や農作物を運ぶ時
【白ナンバーのトラック】
- 個人の趣味やレジャー関連のものを運ぶ時
- 大きな荷物や個人DIY用に木材を運ぶ時
- 個人消費しかしない農家が収穫物や農産物を運ぶ時
- 引越しを行う時
- 自社商品のみを運ぶ時
先ほどをお伝えしたように緑ナンバーはトラック運送業者が合法的に営業を行うために必要な許可証となりますので、他者(他社)との間に金銭が発生する使用を行う場合は事前に取得しておく必要があります。
緑ナンバーを取得せずに事業用に使用した場合は?
緑ナンバーを取得せずに商業的な貨物輸送を行うことは違法となります。貨物自動車運送事業法違反に抵触し、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金が科せられます。
また、緑ナンバーをレンタルする「ナンバー貸し(または車両持込みドライバー)」を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、これらも違法です。利用すれば同レベルの罰則が科せられますので、誤って利用しないよう注意しておきましょう。
弊社はトラック事業者様向けのサポートを行っているため、個人事業主(またはそれと同等の規模の事業者)の方から「トラック1台でも緑ナンバーを取得できませんか?」とご相談をいただくことがあり、その際にナンバー貸しの話が出て来ることもあります。
しかし、トラック1台規模の事業者の方には黒ナンバーによる合法的な事業形態が用意されていますので、弊社ではそちらをご紹介しています。
緑ナンバーのメリット・デメリット
それでは、緑ナンバーを取得できる規模ではあるものの、事業内容などの理由で取得の必要性が曖昧な場合はどうでしょうか?
このようなケースでは、メリット・デメリットを比較したうえで決定すると失敗も少なくなります。
緑ナンバー | 白ナンバー | 黒ナンバー | |
---|---|---|---|
運搬物 | 全て可能 | 自社商品のみ | 全て可能 |
社会的信用性 | 国から認可 | 自社努力に依存 | 受注先に依存 |
保険料 | 〇 | ◎ | △ |
自動車税 | 9,000円~ | 11,500円~ | 3,800円 |
点検整備期間 | 基本3ヶ月 | 8トン未満は6ヶ月 | 基本3ヶ月 |
車検期間 | 1年(軽は2年) | 1年(軽は2年) | 2年 |
社会的信用性が高い
緑ナンバーは国が定めた要件をクリアした事業者にのみ与えられます。運送業に関わる全ての事業者がこのことを認識していますので、緑ナンバーを保有しているのとしていないのでは信用度に大きな違いが生まれます。
既に取引相手が決まっていれば別ですが、白ナンバーの場合は、まず営業から力を入れなければ仕事を受注することも難しいでしょう。
黒ナンバーの場合は受注する相手がある程度決まっているかと思いますので、信用度に関しては特に気にする必要はないでしょう。
税金が白ナンバーより安い
毎年かかる自動車税、自動車重量税は白ナンバーよりも緑ナンバーの方が安く設定されています。
緑ナンバー | 白ナンバー | 黒ナンバー | |
---|---|---|---|
自動車税 |
|
|
3,800円 |
自動車重量税 |
|
|
5,200円 |
登録免許税 | 12万円 | 0円 | 0円 |
※:自動車税と自動車重量税は年間での支払い額
一方、黒ナンバーの方が緑ナンバーよりも自動車税、自動車重量税は安く設定されていますので、緑ナンバーか黒ナンバーで迷っている場合は、税金の安さが大きな比較ポイントになるでしょう。
登録免許税は、緑ナンバーのみ1度だけ必要になります。
保険料は白ナンバーより高い
保険料は白ナンバーが最も安いです。
緑ナンバー | 白ナンバー | 黒ナンバー | |
---|---|---|---|
自賠責保険料 |
|
|
15,830円 |
※離島以外の地域(沖縄県を除く。)
※保健期間12ヶ月の場合
また、任意保険に関してはいずれも取り扱っている保険会社が一般の自家用車と比べると少ないのですが、『緑ナンバー = 白ナンバー > 黒ナンバー』といった感じで黒ナンバーが最も取扱いが少ないです。
そういった意味でも保険に関しては黒ナンバーが一番デメリットが大きいと言えます。
点検整備期間は、ほとんど変わらない
8トン未満の場合のみ白ナンバーは6ヶ月の点検整備期間となっており、それ以外は3ヶ月となっています。よって、それほど大きな違いはありません。
車検期間は変わらない
車検期間はどのナンバープレートでも変わりません。軽は2年、それ以外は1年ごと(新車の場合は初回のみ2年)の車検が必要です。
デメリットが大きいと感じた場合は黒ナンバーで事業を開始
緑ナンバーよりも黒ナンバーが優れている点は『とにかく費用が安い』ということです。登録免許税の12万円はありませんし、毎年かかる自動車税や自動車重量税は半額以下で済むため、低コストで事業を継続することができます。
残念ながら保険料が緑ナンバーの1.5倍~2倍ほどにはなりますが、トータルコストで考えると黒ナンバーの方が費用が少ない可能性は高いです。
アルコールチェックに違いはない
2023年12月から白ナンバーのアルコールチェックが『アルコールチェッカーの使用』が必須のうえで義務化されます。緑ナンバーでは2011年から実施されている制度であるため、今後は両ナンバーの違いはなくなります。
事業所の対象も
- 定員11名以上の自家用自動車を1台以上使用
- その他の自家用自動車を5台以上使用
(※大型自動二輪車または普通自動二輪車は、それぞれ1台を0.5台として計算)
となっていますので、当てはまる事業者の方も多いのではないでしょうか?
緑ナンバーの取り方
ここからは緑ナンバーを取得するまでの流れをご紹介します。
申請前に確認!認証取得の要件
誰でも緑ナンバーを取得できるわけではありません。国の定める要件をクリアしていなければ緑ナンバーの取得は不可ですので、申請前に必ず確認しておきましょう。
- 車両台数: 事業所に5台以上の車両を所持している必要があります。
- 事業所立地:建築基準法・都市計画法・農地法等関係法令・消防法に準じており、事業所として機能する広さ(明確な決まりはありませんが10㎡以上が望ましい)を満たした事業所が必要です。
- 十分な資金力:従業員の給与や車両の燃料費&修繕費の2ヶ月分、車両費&賃料の6ヶ月分、税金&保険料の1年分が銀行残高に置かれている必要があります。
- 運行管理者の確保:29台未満で1人、それ以降は30台ごとに1人ずつ運行管理者が必要です。
第二種運転免許は必要ありません
緑ナンバーだからと言って第二種運転免許を必ずしも取得する必要はありません。第一種、第二種の分類は自動車の種類によって変わりますので、適しているものを持っていれば問題ありません。
申請から取得までの流れ
- 事前準備と調査:
- 運送業に関する事前調査を行い、事業計画を策定します。
- 運送業に必要なトラックを所有または購入します。
- 適切な業務所や駐車場を確保します。
- 事業許可証の取得:
- 所在地の運輸支局に対して、事業許可証の申請を行います。
- 申請に必要な書類や情報(事業計画、トラック情報、法人登記簿謄本など)を提出します。
- 運輸支局が申請書と提出書類を審査し、許可証を発行します。
- トラックの登録:
- 所有するトラックを適切に登録します。これには車両台帳や車両検査などの手続きが含まれます。
- 車両保険の取得:
- 貨物保険や責任保険など、適切な車両保険に加入します。保険証明書が必要です。
- 運輸業者としての登録:
- 運送業者としての登録を行います。個人事業者または法人である場合に応じて適切な手続きを行います。
- 業務所設置:
- 運送業の事務所や営業所を設置し、所在地情報を提出します。
- 車両検査と安全基準の確認:
- 所有するトラックは定期的な車両検査を受け、安全基準を満たしていることを確認します。
- 法令順守:
- 運送業者は、道路交通法や運送業法などの関連法令および規制を遵守します。
- 許可証の取得:
- 運輸支局が審査を完了し、緑ナンバーの許可証を発行します。
- 運送業の開始:
- 許可証を取得したら、運送業を開始します。貨物の輸送業務を開始し、法令順守を継続します。
緑ナンバー取得にかかる費用
必ずかかる費用として登録免許税(法定費用)12万円とナンバープレート代1,500円~2,000円となります。
ここからさらに費用がかかるとしたら行政書士への依頼料(約60万円~70万円)となります。当然ですが、利用しなければ費用は発生しません。
自身で緑ナンバーの取得を行えば大幅な節約にはなりますが、取得までの時間は大幅なロスとなります。例えば、行政書士を利用していれば3ヶ月~5ヶ月ほどで取得できますが、提出書類のやり直しや要件の見直しが発生すれば数週間から数ヶ月レベルで遅れが出ます。
素人であればどうしても気づかないミスが出てくるもの。特に新規で事業を始める場合は緑ナンバーの取得以外に様々なアドバイスをもらえますので、行政書士への相談が安心です。