働きやすい職場認証制度とは?申請前に知っておきたいメリットや基本情報まとめ

働きやすい職場認証制度とは?申請前に知っておきたいメリットや基本情報まとめ 働きやすい職場認証制度

物流業界の2024年問題が騒がれる昨今、トラックをはじめ、バスやタクシーといった運送業全体が人材不足に直面しています。運送業界で働く30歳未満の人材は同業界で働く全体人口のたった10%にも届いていません。

「求人を出しているけど、なかなか応募がない…」「若い人材が入ってこない…」といった課題を解決するためには、運送業特有の長時間労働などのマイナスな労働環境の改善が必要です。

そこで、登場したのが働きやすい職場認証制度

自社の労働環境を対外にアピールできるのはもちろん、認証取得を目指す中で自社に足りていない労働環境改善ポイントを確実に潰していくことができます。
若い人材・優秀な人材を確保、そして事業の継続・拡大に大きく貢献してくれるでしょう。

この記事では

  • 働きやすい職場認証制度とは?
  • 認証を取得するメリットは何?
  • 申請開始はいつから?
  • 認証取得に必要な費用はいくら?
  • 申請できる条件
  • 認証取得に必要な審査項目
  • 申請から認証取得までの流れ

など、初めて認証を取得する事業者が知っておきたい事項を社会保険労務士監修のもと細かく解説しています。ぜひこの記事を参考に、認証を取得してみてください。

清水美穂
この記事の監修者
清水 美穂

しみずハート社会保険労務士事務所代表 / 社会保険労務士 / ファイナンシャルプランナー
『労使ともにハッピーになれる職場づくり』を目指す。

働きやすい職場認証制度の認証取得でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

SBサポートでは、運送業に強い社会保険労務士やコンサルタントが御社の認証取得を徹底サポートいたします。「制度について質問したい」「自社が認証取得の基準を満たしているか、専門家からアドバイスが欲しい」「必要書類の添削をして欲しい」など、お悩みの事業者様はお気軽にご相談ください。

働きやすい職場認証制度とは?

働きやすい職場認証制度(正式名称は「運転者職場環境良好度認証制度」)とは、トラックやバス、タクシー事業の労働環境の改善を仕事を探している人に「見える化」するための制度です。令和2年8月21日に国土交通省、厚生労働省から発表された取り組みであり、自動車運送事業の業界課題である人材不足を解消するために考案されました。

自動車運送業界は長時間労働や低賃金の問題が長らく続いています。

そのため、就職を目指す人たちからは忌避されることが多く、人材不足に陥っています。例えば、トラックドライバーの約70%が40歳以上というデータが国土交通省の調査でわかっています。

トラック輸送状況の実態調査

引用元:トラック輸送状況の実態調査結果(全体版) 

バスやタクシー業界でも同様の傾向にあり、自動車運送業界の労働環境の現状を鑑みた厚生労働省や国土交通省は2024年4月1日から自動車運転業務(ドライバー)に年間残業時間上限960時間の規制を設け、違反した場合は罰金や懲役になる法律を制定しています。

このような取り組みの結果、すでに様々な法人で職場環境をホワイト化させていますが、残念ながら社会には浸透していないのが現状です。

そこで、もっとわかりやすく「自動車運送事業の業界は労働環境を整えることに力を入れていますよ」とアピールするために働きやすい職場認証制度が作られたわけです。

国土交通省と厚生労働省による新しい制度

この制度は2つの省により2020年8月に決定されました。しかし、審査・認証は一般財団法人日本海事協会(ClassNK)によって行われます。日本海事協会とは、船舶に関するさまざまな事業に携わっている国際船級協会です。

まだ発足されて間もない制度なので、世間的には認知度があまり高くないでしょう。しかし、この制度の発端は国土交通省と厚生労働省なので「信頼度・安心感」はかなり高いといえます。

また、認知度は少ないですが、認証された事業者が「認証マーク」を利用することができることもポイントです。目立つオリジナルマークにより、周りからの制度への関心と注目を集める効果が期待できます。

正式名は「運転者職場環境良好度認証制度」

働きやすい職場認証制度は愛称で、正式名称は運転者職場環境良好度認証制度です。また、別名にホワイト経営認証制度という呼び方まであります。

しかし、国土交通省の報道発表資料(各メディアに向けた資料)には「働きやすい職場認証制度」が使われていたので、今後は正式名称よりも愛称の方が広く認知されるでしょう。

また、「環境優良事業者認定制度」や「少額投資非課税制度」など様々な制度の愛称を各議が公募している例をみると、愛称にすることで認知度が広まりやすくなり、親しみやすくなることが期待できます。

3つのランクとマーク

働きやすい職場認証制度は以下の3つのランクとマークが用意されています。

ランク マーク
一ツ星 働きやすい職場認証制度一ツ星マーク
二ツ星 働きやすい職場認証制度二ツ星マーク
三ツ星 働きやすい職場認証制度三ツ星マーク

初回は一ツ星に挑戦することができ、合格できれば次は二ツ星、最後に三ツ星といった順番で取得できます。

当然ですが、三ツ星を獲得した事業者の方がより厳しい基準をクリアしていることになりますので、自社の労働環境の良さを外部にアピールすることが可能です。

認証取得で得られる2つのメリット(インセンティブ)

働きやすい職場認証制度のメリット

働きやすい職場認証制度の認証取得で得られるメリットは2つあります。

求職者の応募数の増加を期待できる

働きやすい職場認証制度はその名の通り『私たちは労働環境を整え、働きやすい職場を提供している』とアピールするためのものです。認証を取得していれば厳しい基準をクリアした労働環境を持っている証明になるため、認証を取得していない事業者と比較すると、より多い求人応募を期待することができます。

また、厚生労働省の支援によりハローワークの求人票に認証取得の記載がされますので、「認証取得したけど求職者に情報が届いておらず価値を感じない…」といった心配はありません。

さらに、SBサポートが運営するGooood(グード)のような働きやすい職場認証制度の認証を取得した事業者専門の求人サイトに求人掲載を行えるため、より幅広く求人活動を行うことができます。

取引先や関連会社からの信頼感が増し、仕事を受けやすくなる

例えば、トラック運送業界ではGマークを取得していないと大手からの受注が難しいケースがあります。

働きやすい職場認証制度は2020年に開始したばかりの制度であるためGマークほどの効果は期待できませんが、こういった認証マークは発注者側からすると安全性を確認するために重要な指標となりますので、今後のことを考えて早めに取得しておいて損はありません。

仮にあなたが発注者側だとして想像してみてください。社員を大切にしている会社が雑な仕事をするとは考えにくいですよね?

また、シンプルに「依頼した会社の従業員が過労で事故を起こして事業停止した。また新しい発注先を探さないと…」といったトラブルを事前に避けられるわけですから、やはり業務面でも働きやすい職場認証制度の効果を期待できると言えます。

申請開始時期は2023年7月18日(火)~9月15日(金)

「一つ星」「二つ星」は2023年7月18日(火)~2023年9月15日(金)

2023年の働きやすい職場認証制度の申請受付期間はランクによって異なります。「一つ星」「二つ星」は2023年7月18日(火)~2023年9月15日(金)です。

2023年度スケジュール

■申請受付期間
2023年7月18日~2023年9月15日

引用元:自動車運送事業者の「働きやすい職場認証制度」

「三つ星」は2023年9月19日~2023年10月16日

一方、三つ星は少し遅く、2023年9月19日からの申請開始となります。間違えないように注意しておきましょう。

認証取得に必要な費用

「一つ星」「二つ星」は65,000円~

働きやすい職場認証制度の認証取得に必要な費用は、ランクによって異なります。「一つ星」と「二つ星」について以下の通り。

一つ星新規申請 一つ星継続申請 二つ星新規申請
紙申請
一部電子申請
電子申請 紙申請
一部電子申請
電子申請 紙申請
一部電子申請
電子申請
1 審査料 50,000円 30,000円 50,000円 15,000円 50,000円 30,000円
+複数の営業所を申請対象とする場合 +3,000円 × 営業所数(本社除く)
2 登録料 60,000円(有効期間に重複機関が1年以上生じる場合、30,000円を差し引く)
+複数の営業所を申請対象とする場合 +5,000円 × 営業所数(本社除く)

審査料は申請後に支払い、登録料は無事に認証を取得できたタイミングで支払います。

申請は『紙ベースでの申請』と『電子申請』の2種類を選ぶことができますので、電子申請を選択することで割引価格での申込が可能となります(具体的な申込手順は後述)。

また、働きやすい職場認証制度は営業所ごとに取得することができますので、複数の営業所で認証を取得する場合は営業所ごとに審査料3,300円、登録5,500円が加算されます。

働きやすい職場認証制度の申請要件と認証項目

申請の対象事業者・資格

働きやすい職場認証制度の対象事業者は以下の3つです。

  • トラック事業者(第二種貨物利用運送事業含む)
  • バス事業者(乗合バス事業者と貸切バス事業者)
  • タクシー事業者

トラック事業者(第二種貨物利用運送事業含む)

トラック事業には許可制と届出制に別れており、さらにその中でも細分化されています。第二種貨物利用運送事業とは届出制の1つですが、簡単に説明すると、船舶・航空・鉄道も使う事業者です。つまり、トラックの運転手だけではなく、操縦士や運転士にも適応されます。

バス事業者(乗合バス事業者と貸切バス事業者)

乗合バスとは一般乗合旅客自動車運送事業のことです。一般的に街の各停留所を走行するバスをイメージするとわかりやすいです。個別に料金を支払い、他の乗客と「乗り合わせる」ことが特徴になります。

そして、貸切バスとは旅行会社や幹事が取りまとめて契約、支払いし、限られた団体だけの乗客が乗るバスです。

タクシー事業者

タクシー事業は、国土交通省の法令ではハイヤー・タクシー事業者となっており、1台のタクシーによる「個人タクシー事業者」も対象となります。ハイヤーとタクシーの違いは、ハイヤーが完全予約制に対し、タクシーは街中いつでも乗車できる点です。

申請要件(申し込みに必要な条件)

『申請要件(申し込みに必要な条件)』と『認証項目(認証を取得するための審査項目)』をそれぞれクリアすることで認証を取得することができます。

働きやすい職場認証制度の申請要件(申し込みに必要な条件)は下記の9つです。

①運送事業の事業許可を取得後3年以上計画していること。但し、事業許可取得後3年以上経過していない事業者であっても、企業グループの再編等により事業許可取得後3年以上経過している事業者の就業規則等を継承して運送事業を行っている場合等特別な事由がある場合は、この限りではない。

②労働基準関係法令違反に係る厚生労働省及び都道府県労働局の公表事案として同省等のホームページに掲載されていないこと。

③労働基準関係法令の違反で送検されていなこと。または、送検されたが不起訴処分又は無罪となっていること。

④使用者によって不当労働行為が行われたとして都道府県労働員会又は中央労働員会から救済命令等を受けていないこと。または、中央労働員会による再審査又は取消訴訟により、救済命令等の取消しが確定していること。

⑤道路運送法、貨物自動車運送事業法等に基づく行政処分も違反点数が20点を超えていないこと。

⑥認証申請の対象営業所について、月の拘束時間(トラック・タクシー)、4週間を平均した1週間当たりの拘束時間(バス)又は休日労働の限度違反に対する行政処分※による累積違反点数が5点を超えていないこと。
※道路運送法、貨物自動車運送事業法等に基づく行政処分が対象。

⑦認証申請の対象営業所について、健康診断受診義務違反に対する行政処分による違反点数を受けていないこと。

⑧認証申請の対象営業所について、社会保険等加入義務違反に対する行政処分による違反点数を受けていないこと。

⑨認証申請の対象営業所について、最低賃金違反に対する行政処分による違反点数を受けていないこと。

引用元:2020年度-「働きやすい職場認証制度」申請案内書
※テキストを読みやすいように①~⑨の行間を空けた修正を加えています。

②~⑨の要件については、期間を基準日から遡って過去1年間の法令違反、行政処分等が対象とされています。基準日は申請付きの前月の任意の日とし、申請者の申告によって決めることができます。

①~⑨の要件は少し難しく書かれていますので、ここから一つずつ詳しく解説していきます。

申請要件①について

他人の求めに応じて、有償で自動車を使用して貨物を運ぶ場合は運送事業の事業許可を取得する必要があります。運送事業許可の取得方法等に関しての説明についてはここでは割愛いたしますが、働きやすい職場認証制度では、運送事業許可取得後3年以上経過していることが申請の要件になっています。

また、運送事業許可取得後3年未満の会社も下記のようなケースであれば申請できます

近年は後継者不足等の理由により企業間の合併、買収が盛んに行われており、運送事業者もそのひとつです。運送業者が運送業者を買い取り、2社が1社になって事業のノウハウ・顧客・システム等資源の共有をすることにより経営の効率化を目論むものです。

仮に運送事業許可取得後3年未満の会社Aが、運送事業許可取得後3年以上経過している会社Bに買収され、AがBのグループ会社となったとします。この場合、おそらくA社はB社のグループ会社としてB社の就業規則等を用いて経営を継続するようになります。

このようなケースであれば、A社は運送事業許可取得後3年未満であっても、働きやすい職場認証制度の申請が可能になります。

申請要件②について

平成28年12月26日に開催された第4回長時間労働削減推進本部において『過労死等ゼロ』緊急対策がとりまとめられ、社会全体で過労死等ゼロを目指す取組の強化の一つとして、労働基準関係法令違反に係る公表事案を厚生労働省及び都道府県労働局のホームページに一定期間掲載することが決定されました。

以降、労働基準関連法案に違反し、改善が見られない場合には企業名を公表されてしまうようになりました。例えば、東京労働局では次のような公表を行なっています。

東京労働局の公表:https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000962714.pdf

働きやすい職場認証制度の申請をする場合、このような公表をされていないことが条件となります。

厚生労働省、労働局のホームページに掲載する事案は以下のとおりです。

  • 労働基準関係法令違反の疑いで送検し、公表した事案
  • 平成29年1月20日付け基発0120第1号「違法な長時間労働や過労死等が複数の 事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の 実施及び企業名の公表について」に基づき、局長が企業の経営トップに対し指導し、その旨を公表した事案

掲載期間は公表日から約1年間です。

1年以上前に該当事案を起こしている事業者であれば働きやすい職場認証制度の申請要件を満たしている可能性はありますので、厚生労働省と該当労働局のホームページを確認してみましょう。

申請要件③について

労働時間や賃金不払いなどの労働基準法違反を行なっている場合、労働基準監督署から是正勧告を受けます。都度誠実に対処をしていれば問題はないものの、繰り返し是正勧告を受けているにも関わらずそれを放置している場合や死亡事故・重大事故が発生した場合には送検されてしまう可能性があります。

送検されてしまう時点で事業者の故意によるものであると疑う余地はありませんので、働きやすい職場認証制度では、そのような悪質事業者は申請できないようになっています。

また、これまで送検されていなくとも、下記のような事案(労災かくし)に心当たりがある事業者は送検の可能性が高いため注意が必要です。

  • 賃金の不払いを繰り返している
  • 従業員に賃金不払い残業(サービス残業)を行わせている
  • 偽装請負が関係する死亡災害等の労働災害が発生してしまった
  • 外国人労働者について労働基準関係法令違反があった

毎年約1,000件ほどの事案が送検されており、そのうち約40%ほどが起訴されています。起訴されたうちのほとんどは罰金刑(略式)が課せられていますので、申請要件を満たせない可能性があります。

申請要件⑤について

違反点数が20点を超えてしまうと、働きやすい職場認証制度の申請ができません。

行政処分の違反点数は業態ごとに定められており、下記リンク先にて国土交通省によって発表されています。

業態 リンク
乗合バス (乗合)違反事項ごとの行政処分等の基準
貸切バス 一般貸切旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について
ハイヤー、タクシー 一般乗用旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について
トラック 貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について

違反点数は『その使用停止の日数10日車までごとに1点』と定められています。よって、20日車であれば2点、60日車であれば6点と違反点数も多くなります。

自社の違反点数は国土交通省自動車局の『事業者の行政処分情報検索』で確認することができますので、事前に確認しておくと良いでしょう。

申請要件⑥について

各業態の拘束時間は以下のように定められています。

◆拘束時間【始業時刻から終業時刻までの時間(休憩時間を含む。) 】

  • トラック:原則1ヶ月293時間
  • バス:原則4週間平均で1週間65時間
  • タクシー:原則1ヶ月299時間

◆最大拘束時間
原則1日16時間(ただし、1日の原則的な拘束時間は13時間)

そして、上記の拘束時間に対する違反の数だけ以下のような違反点数が設けられています。

乗務時間等告示遵守違反(安全規則第3条)(運輸規則第21条)

  • 未遵守5件以下:警告
  • 未遵守6件以上15件以下:10日車
  • 未遵守16件以上:20日車
  • 未遵守31件以上3名以上等 30日事業停止

平成30年7月1日より自動車運送事業者に対する行政処分等の基準が改正され、月の拘束時間及び休日労働の限度に関する違反が確認された場合は、上記に加え、別に件数を計上し、次のとおり処分日車数を加算されることになっています。

  • 未遵守1件:10日車
  • 未遵守2件以上:20日車

10日車あたり1点換算ですので、50日車以上(5点以上)に該当する違反があると働きやすい職場認証制度に申請できないわけです。

申請要件⑦について

自動車運送事業の健康診断受診義務違反は以下のような基準が設けられています。

疾病、疲労等のおそれのある乗務 初違反 再違反
健康診断未受診者1名 警告 10日車
健康診断未受診者2名 20日車 40日車
健康診断未受診者3名 40日車 80日車
疾病、疲労等による乗務 80日車 160日車
薬物等使用乗務 100日車 200日車

さらに、2021年度からは次の違反も新たな行政処分の対象として追加されます。

未受診者による健康起因事故が発生したもの

  • 初違反:40日車
  • 再違反:80日車

※健康起因事故とは、当該運転者が、脳疾患、心臓疾患および意識喪失により生じた重大事故をいう。
※事業者が、当該運転者の事故発生日から過去 1 年以内に法定の健康診断を受診させずに乗務させていた場合などに適用する。

これらの中で一つでも違反点数が付けられている場合は働きやすい職場認証制度に申請することはできません。

申請要件⑨について

会社はドライバーに対して最低賃金以上の賃金を支払う義務があります。ドライバーと会社との間の契約で最低賃金額に達しない賃金を定めていたとしても、その部分については無効となり、最低賃金との差額を支払わなければなりません。

違反が発覚した場合、以下のように行政処分を受けます。

初違反 再違反
一部の運転者への支払い 10日車 20日車
全ての運転者への支払い 20日車 40日車

これらの中で一つでも違反点数が付けられている場合は働きやすい職場認証制度に申請することはできません。

実際に計算してみると最低賃金を越えていないケースもありますので、事前に確認しておきましょう。

【最低賃金の計算方法】

  1. 時間給の場合
    時間給 ≧ 最低賃金額(時間額)
  2. 日給の場合
    日給 ÷ 1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
  3. 週給、月給等の場合
    賃金額を時間当たりの金額に換算し、最低賃金(時間額)と比較します。
  4. 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合
    出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除した金額 ≧ 最低賃金(時間額)
  5. 上の1から4が混合している場合
    例えば『基本給が日給制で各手当(職務手当等)が月給制』のように混合している場合は、それぞれ上の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)と比較します。

最低賃金額は、時間によって定められています。

「給与総額はいくらだ。」というものではなく、給与総額を働いた時間で割り、1時間あたりいくら支払っているのかが基準になり、それを地域別に定められている最低賃金と比較します。

賃金が時間以外の期間又は出来高払制その他の請負制によって定められている場合は、賃金が支払われる労働者について賃金を時間についての金額に換算します。つまり、月給制や年俸制で働く労働者であっても、その賃金を時給に換算した額によって判定するようになります。

また、勤務形態は問いませんので、正規雇用・非正規雇用問わずすべての労働者に適用されます。

ドライバーの賃金制度が全て歩合給の場合でも、固定給と歩合給が併用される場合でも、給与総額を1時間当たりに換算した金額が都道府県別最低賃金額に満たない場合は最低賃金法違反となってしまいます。

認証項目(認証を取得するための審査項目)

認証項目(認証を取得するための審査項目)は5つの分野にわけて用意されています。

対策分野 認証項目
A 法令順守等 9項目
B 労働時間・休日 3項目
C 心身の健康 4項目
D 安心・安定 トラック8項目、バス8項目、タクシー10項目
E 多様な人材の確保・育成 1項目

さらに、各分野の認証項目は『1.必須項目』と『2.グループ内の複数の小項目のうち、達成できている小項目の合計点が基準点を越えていればOKの項目』の2種類が用意されています。

『2.』に関しては、B~Eの分野が対象となります。

対策分野 通し番号 基準点数
B 労働時間・休日 11 6点以上
C 心身の健康 16 6点以上
D 安心・安定 19 4点以上
E 多様な人材の確保・育成 27 6点以上

※通し番号は各認証項目に振られたものです。詳細は認証項目の表(PDF資料33ページ目から)をご覧ください。

このように認証項目は細かく設定されており、全てをこのページでご紹介することは難しいため、ここからはポイントを絞って解説していきます。

A 法令順守等

過去の1年間に渡って労働基準法を違反していないかや就業規則があるか、36協定を結んでいるかなどの9項目があります。全ての項目が『1.必須項目』に該当しますので、申込の際は細かく確認しておきましょう。

B 労働時間

労働時間での必須項目は以下の2つです。

  1. 認証申請の対象営業所について、月の拘束時間(トラック・タクシー)、4週間を平均した1週間当たりの拘束時間(バス)又は休日労働の限度違反に対する行政処分による累積違反点数が5点を超えていない(※)
  2. 運転者ごとに時間外労働時間及び休日労働時間を賃金台帳などで適切に管理しているか、又はこれと同等以上の水準でソフトウェアにより管理している

※:道路運送法、貨物自動車運送事業法等に基づく行政処分が対象

その他の項目では『労働時間や休日に関する規定を定めているか』『有給休暇を除いてドライバーの年間休日を105日以上計画しているか』などがあり、点数が6点以上になれば基準クリアです。

C 心身の健康

心身の健康での必須項目は以下の3つです。

  1. 労働安全衛生法令に基づき、安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会が設置されているか、安全、衛生に関する事項について従業員の意見を聴くための機会が設けられている
  2. 認証申請の対象営業所について、健康診断受診義務違反に対する行政処分による違反点数を受けていない
  3. 所要の健康診断を実施し、その記録・保存が適正にされている

その他の項目では『ドライバーの健康状態や疲労状況を把握する機器を導入しているか』『管理職や人事担当者が年に1回人事面談を実施しているか』などがあり、点数が6点以上になれば基準クリアです。

D 安心・安定

安心・安定の必須項目は以下の7つです(タクシー事業者の場合は追加で2つの必須項目があります)。

  1. 認証申請の対象営業所について、社会保険等加入義務違反に対する行政処分による違反点数を受けていない
  2. 健康保険法、厚生年金保険法、労働者災害補償保険法及び雇用保険法に基づく社会保険等加入義務者として、社会保険等に適切に加入している
  3. 交通事故を発生させた場合の違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をしていない
  4. 認証申請の対象営業所について、最低賃金法違反に対する行政処分による違反点数を受けていない
  5. 最低賃金法に基づき、最低賃金額以上の賃金を支払っている
  6. 歩合制度が採用されている場合でも各運転者の労働時間に応じ、各人の通常の賃金の6割以上の賃金が保障されている。あるいは、歩合制度を採用していない
  7. 労働基準法に基づき、時間外労働、休日労働、深夜労働の割増賃金を支払っている

その他の項目では『労災や働けない場合などに補償制度があるか』『退職金制度を設けているか』などがあり、点数が4点以上になれば基準クリアです。

ドライバーが安心して働ける制度を整えている事業者であれば、この項目をクリアしやすいと言えます。

E 多様な人材の確保・育成

このカテゴリには必須項目はなく、選択項目だけです。女性が働きやすい環境が整っているか、ドライバーのニーズに対応できるシフト制度があるかなど8項目の内、6点を取れればクリアとなります。

働きやすい職場認証制度の申請方法

ここでは申請方法の概要をご紹介します。全体の流れや必要書類をザっと確認する場合にご活用ください。

本格的に申請を検討しており『詳しい申請方法や必要書類の紹介、申請時の注意点を知りたい』という場合は、働きやすい職場認証制度の申請方法【完全ガイド】をご覧ください。

申請から認定取得までの流れ

働きやすい職場認証制度の申請の流れ

大まかな流れは上画像の通りです。

申請書類と必要書類を提出し、その後審査料を振込。審査が開始から数ヶ月後に審査結果が発表されますので、見事合格すれば登録料を振込。

最終的に登録書が届けば、働きやすい職場認証制度の認証取得完了となります。

手順1.審査申込書類の提出

はじめに、用紙での申請か電子申請かを選びます。用紙での申請では必要書類や事業者の情報を全て郵送する必要があります。電子申請なら「事業所の情報をインターネット上で入力して必要書類は郵送する方法」と「必要情報と書類をすべて専用ページにアップロードする方法」の2つが用意されています。

いずれの申請方法でも提出書類に違いはありません。以下のように、事業所の内容を記載した書類3つと各種証明に必要な書類の写し6つが必要です。

  1. 審査申込書
  2. 営業所情報
  3. 自認書
  4. 以下の書類の写し
    1. 就業規則(10人未満の事業所は労働基準監督署の受付印不要)
    2. 36協定
    3. 労働条件通知書
    4. 安全衛生委員会等関連書類
    5. 労働安全衛生規則第52条関係で規定する定期健康診断結果報告書(様式第6号)
    6. 事業改善報告書等(行政処分の違反点数を受けている事業者のみ対象

もし就業規則や36協定など、これまで作る必要はなかった書類があれば、今回の申請を機に新しく作成しましょう。

自動車運送事業向け就業規則の作り方

36協定とは?自動車運送事業向けに概要や作り方を解説

手順2.審査料を支払う

書類を提出すると日本海事協会から審査料の請求書が送付されてきます。

審査料は通常50,000円ですが、電子申請の場合は20,000円~の割引がされます。営業所が複数ある場合は『営業所の数×3,000円』の追加費用が必要です。

請求書発行後2週間以内に入金が確認されなかった場合は申請が取り消されますので、請求書が届いているか随時確認し、確認できた段階ですぐに振込みをしましょう。

手順3.審査の実施

提出した書類を元に審査が実施されます。

書類内容に虚偽があったり、実態との違和感が感じられる部分があった場合は、個別に『追加書類の提出』や『対面審査』が実施されます。

手順4.審査結果の発表&登録料の振込

無事に審査に合格すれば、日本海事協会から合格通知が届きます。通知書が届くのは2023年12月下旬以降。

また、合格通知と共に登録料の請求書も届きます。登録料は60,000円。営業所が複数ある場合は『営業所の数×5,000円』の追加費用が必要です。

審査料には割引がありましたが、登録料に割引はありません。

手順5.登録書の発行、送付

登録料の支払い後、登録書が発行され、送付されてきます。同時に認証マークの使用が許可され、働きやすい職場認証制度の認証事業者一覧ページに公開されます。

以上で働きやすい職場認証制度の認証取得完了となります。

申請する上での注意事項

申請の対象事業者に当てはまっていても、申請の1ヶ月前から1年以内の事業所の状態によっては申請が受け付けてもらえない可能性があります。

注意事項を簡潔にまとめると以下の通りになります。

  • 事業開始後3年経過していない(事業グループの再編成等を除き)
  • 労基関係法令違反でトラブルを起こしてしまった
  • 従業員が不当労働行為をした
  • 行政処分違反点数が20点を超えている
  • 労働時間の限度違反の処分で違反点数が5点を超えている
  • 健康診断、社会保険加入、最低賃金に関して違反点数を受けている

これらが認められる場合、申請を受け付けてもらえません。また、虚偽の申請や他の条件次第でも申請の拒絶や取り消しをされることがあるので、申請案内書を事前によく確認するようにしてください。

SBサポートの働きやすい職場認証制度の申請支援

SBサポートでは、働きやすい職場認証制度の認証を取得するためのサポート月額8,400円(税込)で行っています。

初めて認証取得をする事業者様には一つ星マークを取得するために必要なアドバイス、二つ星・三ツ星を目指す事業者様には認証合格に必要な難易度をクリアするために必要なアドバイス、とそれぞれの目標とされているレベルに応じた適切なサポートをさせていただきます。

サポートを行うのは自動車運送業を専門とした行政書士や社会保険労務士、コンサルタントですので、安心してご依頼ください。「相談したのに、こちらの業界のことを全く理解してもらえなかった…」なんてトラブルは絶対におきません。

詳しいサポート内容やご利用の流れ、メリットなどは下記ページにてご紹介していますので、働きやすい職場認証制度の認定取得をご検討中の方は、ぜひ一度ご覧ください。

働きやすい職場認証制度の認証取得でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

SBサポートでは、運送業に強い社会保険労務士やコンサルタントが御社の認証取得を徹底サポートいたします。「制度について質問したい」「自社が認証取得の基準を満たしているか、専門家からアドバイスが欲しい」「必要書類の添削をして欲しい」など、お悩みの事業者様はお気軽にご相談ください。

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働きやすい職場認証制度の二つ星、三つ星の違いは何?

働きやすい職場認証制度のランクには二つ星や三つ星が用意されています。一つ星とは違い、 対外へのアピール時に一つ星よりも優位性を強調できる 二つ星と三つ星の事業者は、対面による審査を行った営業所については、長期間監査を実施していなくても監査の...
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【社会保険労務士 監修】働きやすい職場認証制度の関連助成金【まとめ】

働きやすい職場認証制度の認証を取得した事業者は通常の助成金以外にも、いくつかの助成金を得られるケースが存在します。 そこで、このページでは関連助成金として、その内容をご紹介していきたいと思います。 ※当資料の情報は2022年5月時点のもので...
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働きやすい職場認証制度の申請方法 | 全体の流れ、必要書類、費用をプロがまとめて解説

働きやすい職場認証制度のような制度は用意する書類が多く、また国土交通省などから出ている公式の文書を読んでも硬い言葉が多いため、自社だけで理解して申請を行うことは難しいです。 仮に申請まで行えても、書類不備や記入ミスなどによって再提出が必要に...
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