新規事業の立ち上げ、拠点拡大、効率化…運送業における営業所新設は、様々な目的で検討される重要な決断です。しかし、いざ新設しようとすると、手続きや必要書類、許可申請など、多くの疑問や不安がつきもの。
そこで本記事では、認可までの流れから、選定のポイント、必要書類、よくある質問まで、営業所新設に関するあらゆる疑問を網羅的に解説していきます。
トラックの営業所新設の申請から認可までの流れ
手順1.認可申請書の作成・届出
営業所の新設に関しては、新規開業にほぼ等しい申請書類の作成が必要になります。最大の違いは、(新規開業時では必要な)法令試験がないことです。
届出は、管轄運輸局になります。
また、この時点で認可の要件に完全に該当することが必要となります(詳しくは『営業所新設の認可申請要件』の項目で後述)。
手順2.運輸局による現地調査
申請書の受理後、運輸局による営業所・車庫の現地調査が行われ、会社への意見聴取も同時に行われます。
手順3.認可書の交付
手順1~2を経て、認可書が交付されます。(おおむね3ヵ月後)
手順4.登録免許税の納付
運輸局の指示に従い、登録免許税を納付します。原則として、現営業所のある都道府県内および隣接都道府県内への新設には登録免許税はかかりません。それ以外の地域においては15,000円の登録免許税がかかります。
手順5.運行管理者・運賃・料金等の届出
運行管理者・整備管理者の選任・届出、運賃料金表の届出、新設営業所の全車両の登録をおこないます。
手順6.運輸開始届の届出
認可後、速やかに運輸開始届の届出をおこないます。
トラックの営業所新設の要件
資金計画
所要資金の見積りが適切であるとともに、資金計画が合理的で確実であることが必要です。所要資金は、その50%以上の自己資金が申請日以降常時確保されていると同時に、開始当初に必要な資金は全額が申請日以降常時確保されていることが必要です。
所要資金の内容は、車両費、土地・建物費、機械器具・什器備品、運転資金、保険料・租税公課、その他の費用を言います。
事業用自動車
事業者(申請者)が使用権限を有する車両であることが必要です。車両区分は、大型車・中型車・小型車の3区分とします。
最低車両数
最低車両数は、営業所の営業区域ごとに3両以上とし、大型車を使用する場合は、営業所の営業区域ごとに全部で5両が必要となります。
このため、3両以上5両未満の申請であれば、「中型車及び小型車を使用しての輸送に限定する」旨の条件が付きます。この条件を解除するには、5両の条件を満たすと共に、条件解除願と増車の事業計画変更の認可申請が必要となります。
営業区域
営業区域は原則として都道府県を単位とします。
営業所
営業所については、次の要件があります。
- 営業区域内にあること
- 申請者が、土地・建物について3年以上の使用権原を有すこと
- 建築基準法・都市計画法・消防法・農地法などの関係法令に抵触しないこと
- 事業計画を的確に遂行できる規模であること
車庫
車庫については、次の要件があります。
- 原則として、営業所に併設すること (併設できない場合、営業所から直線で2km以内の営業区域内にあり、運行管理などの管理が十分可能であること)
- 車両と車庫の境界、車両と車両の間隔が50㎝以上で、営業所に配置される事業用自動車の全てが収容可能であること
- 他の用途に使用される部分と明確に区画されていること
- 申請者が土地・建物について3年以上の使用権原を有すること
- 建築基準法・都市計画法・消防法・農地法などの関係法令に抵触しないこと
- 事業用自動車の点検・整備・清掃のための施設が設けられていること
- 事業用自動車の出入りに支障のない構造であり、前面道路が車両制限令に抵触しないこと (前面道路が私道の場合、その私道の通行に係る使用権原を有する者の承認があり、その私道に接続する公道が車両制限令に抵触しないこと)
休眠・仮眠・睡眠のための施設
休眠・仮眠・睡眠のための施設については、次の要件があります。
- 原則として、営業所または自動車車庫に併設されていること(併設できない場合、営業所と自動車車庫の両方から直線で2kmの範囲内にあること)
- 事業計画を的確に遂行できる規模で、適切な設備があること
- 申請者が、土地・建物について3年以上の使用権原を有すること
- 建築基準法・都市計画法・消防法・農地法などの関係法令に抵触しないこと
運転者
運転者については、次の要件があります。
- 事業計画を遂行できるだけの員数の有資格の運転者を常時選任する計画があること
- 運転者は運輸規則36条1項各号に該当しない者であること
【運輸規則36条1項】
・日々雇い入れられる者
・2ヵ月以内の期間を定めて使用される者
・試みの試用期間中(14日以内)の者
・14日未満の期間ごとに賃金の支払いを受ける者
運行管理体制
運行管理体制については、次の要件があります。
- 営業所ごとに、(配置する事業用自動車の数により義務付けられる)常勤の有資格の運行管理者の数を確保する管理計画があること
- 運行管理の担当役員など、運行管理に関する指揮命令系統が明確であること
- 車庫を営業所に併設できない場合、車庫と営業所が常時密接な連絡をとれる体制が整備されており、点呼などが確実に実施される体制が確立されていること
- 事故防止などの教育・指導体制を整え、事故の処理、自動車事故報告規制に基づく報告などの責任体制、その他緊急時の連絡体制・協力体制について明確に整備されていること
- 上記すべての事項などを明記した運行管理規定などが定められていること
- 利用者などからの苦情の処理に関する体制が整備されていること
法令順守
法令順守については、申請者または(申請者が法人であるときは)法人の業務を執行する常勤の役員などが次のすべての点で問題ないこと、という要件があります。
- 道路運送法、貨物自動車運送事業法、タクシー業務適正化特別措置法などの違反により一定の処分を受けていないこと
- 道路運送法、貨物自動車運送事業法、タクシー業務適正化特別措置法などの違反により、輸送の安全の確保、公衆の利便を阻害する行為の禁止、公共の福祉を阻害している事実などで改善命令を受けた時は、申請日前にその命令された事項が改善されていること
- 申請日前1年間および申請日以降に、自らの責で重大事故を起こしていないこと
- 申請日前1年間および申請日以降に、特に悪質と認められる道路交通法の違反がないこと
- 旅客自動車運送事業等報告規制、貨物自動車運送事業報告規制、自動車事故報告規制にもとづく各種報告書の提出を適正に行っていること
- 自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の違反により、申請日前2年間および申請日以降に、営業の停止命令、認定の取消、営業の廃止命令の処分を受けていないこと
損害賠償能力
損害賠償能力については、次の要件があります。
- 旅客自動車運送事業者が、任意保険または共済(事業用自動車の運行により生じた旅客などの生命、身体、財産の損害を賠償するために講じておくべき基準に適合するもの)に計画車両のすべてが加入する計画であること
トラック営業所新設の認可申請書について
認可申請書は、 各管轄地区の運輸局HPで取得できる所定の用紙を用います。管轄内、管轄外とも同じ書式「事業計画変更認可申請書」を使います。3部提出し、1部は申請者の控です。
また、申請書と同時に下記のような添付書類も提出します。
トラック営業所新設の添付書類について
必要な添付書類については、各地区の運輸局HPに一覧表が掲載されていますが、ここでも参考までに主だった添付書類をご紹介いたします。
※最終的な確認は管轄運輸局で直接行ってください。
事業用自動車の運行に関する書類
- 事業用自動車の運行管理体制を記載した書面(所定の様式あり)
– 管理運営体制組織図
– 運行管理者と整備管理者の資格要件(管理者手帳、資格者証、在職証明書、履歴書、就任承諾書など) - 運転者予定名簿(免許証写、就任承諾書など)
施設の状況を示す書類
- 案内図
- 見取図、平面図
- 施設の使用権原を証する書面
- 都市計画法、建築基準法、農地法などの関係法令に抵触しない旨の宣誓書(所定の様式あり)
- 審査基準に該当しない旨の宣誓書(所定の様式あり)
- 車庫前面道路の道路幅員証明書
事業用自動車に関する書類
- 平成17年国土交通省告示第503号に適合する任意保険または共済に加入することの証明書
- 事業用自動車の一覧表または車検証の写し
その他の書類
- 新任役員がいる場合、様式にのっとった宣誓書(所定の様式あり)
新設営業所が同一運輸局管内か否かの届出相違点
冒頭でお話しましたように、新設営業所の管轄の状況により、次の2例が考えられます。
① トラックが、現在と同一の運輸局管内に営業所を新設する場合
→ 事業計画変更の認可申請
② トラックが、現在とは違う運輸局管内に営業所を新設する場合
→ 営業区域拡大の認可申請
相違点は、②のケースの申請書類の提出先が、新設予定の地区の管轄運輸局である点です。
管轄が変わりますので、添付書類などに相違がある可能性があります。したがって、綿密な運輸局窓口との打ち合わせは不可欠となります。
自社のみの申請も可能だが、行政書士の代行の方がスムーズ
申請内容は多岐にわたりますが、自社でおこなうことは可能です。今回の説明で、概略を理解していただき、運輸局の指示を仰ぎながら進めることが一番の近道でしょう。
ただ、書類の準備にそれなりの時間を要することは否定できませんので、その他の業務でなかなか時間を取ることが難しい場合は行政書士に代行依頼を出しましょう。ほぼ丸投げで済みますし、書類ミスも起きにくいためスムーズに許可申請を終わらせることができます。