貸切バス事業(一般貸切旅客自動車運送事業)を営む事業者が事業用自動車を増車する際、管轄の運輸支局にて増車手続きを行う必要があります。
変更には事業計画変更届出書の他、任意保険の契約書などを提出しなければなりません。
そこで、本記事では貸切バス事業を営む事業者が事業用事業者を増車する際に行わなければならない申請方法について紹介していきます。
増車の要件
貸切バス事業で使用できる事業用自動車には車種区分や車両数などの要件があります。それぞれの要件を満たしていなければ、増車の申請ができなくなってしまうため、あらかじめ要件を確認しておきましょう。
車種区分
- 大型車:車両の長さ9メートル以上または旅客席数50名以上
- 中型車:大型車、小型車以外のもの
- 小型車:車両の長さ7メートル以下で、かつ旅客席数29人以下
車両数
- 業区域ごとに3台以上の車両(小型車・中型車だけを使用する場合)
- 営業区域ごとに5台以上の車両(大型車だけを使用する場合)
使用権限
自己所有もしくはリース
※リース車両の場合、リース契約がおおむね1年以上あることを証明しなければなりません。
増車後の車両台数が40台以上の場合は運行管理者の選任に注意が必要
事業用自動車を増車することで事業に使用する自動車(バス)が40台以上になる場合は、運行管理者を1名追加しなければなりません。
事業用自動車の台数 | 必要な運行管理者数 |
---|---|
39台まで | 2名 |
40台~59台 | 3名 |
60台~79台 | 4名 |
80台~99台 | 5名 |
また、事業用自動車の台数が100台を超える場合は、次の計算式で運行管理者の最低人数を求めることができます。
運行管理者最低人数 =(事業用自動車の台数-100)÷ 30 + 6
例えば、増車後の事業用自動車の台数が120台となる場合
(120-100)÷30+6=6.6666…
つまり、6人の運行管理者の選任が必要になります。
貸切バス事業の場合、トラック運送事業よりも運行管理者の人数要件が厳しく規定されています。貸切バス事業の場合は20台ごとに1名の運行管理者を選任しなければなりませんが、トラック運送事業の場合は30台ごとに1名を追加すれば問題ありません。
増車申請の流れ
事業用自動車の増車が決定したら、管轄の運輸局に増車申請を行う必要があります。増車申請には必要書類や添付書類を提出しなければならず、書き方が分からないという方も珍しくありません。ここでは、必要な書類や記入方法、提出先について紹介していきます。
手順1.書類を準備する
増車申請に必要な書類は以下の通りです。
- 事業計画変更認可申請書兼届出書様式
- 管理運営体制組織図(様式1)
- 運行管理者、整備管理者の資格要件を証明する書面
- 運転者予定名簿
- 任意保険または共済保険の契約書
- 増車予定車両の点検整備記録簿
事業計画変更認可申請書兼届出書様式
最新の様式を使用して必要箇所を記入します。
事業計画変更認可申請書兼届出書様式については各運輸局のホームページからダウンロードすることができます。
※必ず最新の様式をダウンロードしましょう。特に事業計画変更認可申請書兼届出書については、平成28年に一部が改変されているため、注意が必要です。
関東運輸局の場合は下記ページからダウンロードが可能です。
管理運営体制組織図(様式1)
事業計画変更認可申請書兼届出書のファイル内に含まれています(※)。
※関東運輸局の場合。管轄の運輸局によってはファイルが分けられている場合もあります。
運行管理者、整備管理者の資格要件を証明する書面
管理者手帳、就任承諾書のコピーを提出します。
※資格者証、在職証明書、履歴書の提出を求められる場合もあります。
運転者予定名簿
運転免許証、就任承諾書のコピーを提出します。
任意保険または共済保険の契約書
対人無制限かつ対物200万円以上の任意保険もしくは共済保険の加入が必須条件となっています。証明書類として保険の契約書を提出しなければなりません。契約前の場合は見積書のコピーでも受理してくれます。
増車予定車両の点検整備記録簿
増車予定車両が中古車の場合、点検整備記録簿を提出しなければなりません。
ただし、直近3ヶ月点検整備記録簿と直近12ヶ月点検整備記録簿の両方が必要となります。仮に12ヶ月点検から3ヶ月以内に増車申請を行う場合は3ヶ月点検を受ける必要はなく、12ヶ月点検整備記録簿のみの提出で問題ありません。
手順2. 書類内容を記入する
管轄の運輸局から事業計画変更認可申請書兼届出書様式をダウンロードして、書類を作成していきます。
変更又は届出内容(項目)
「変更項目」の欄に⑦と⑧を書きます。「新」の欄には増車後の台数、「旧」の欄には増車前の台数を記入します。
1.営業所ごとに配置する事業用自動車の数
車種区分別に増車後と増車前の台数を営業所ごとに記入します。
2.増減車両の明細
増車する自動車の初年度登録年月、型式や登録番号、車台番号を記入します。その他、旅客席数(人)や車両全長(cm)も記入しなければなりません。
※単位に注意
「2.増減車両の明細」では、車両の詳しい内容を記入する必要がありますが、様式にも注意が必要です。
平成28年11月1日以降の申請から「初年度登録年月」、「車台番号」の項目が追加されており、古い様式には「初年度登録年月」、「車台番号」の項目がありません。そのため、必ず最新の様式を使用して書類作成を行いましょう。
3.車庫の必要面積
車両数と必要面積を記入していきます。以下の数値をもとに、車両数から必要面積を計算する必要があります。
- 大型車:38㎡(1車両あたり)
- 中型車:29㎡(1車両あたり)
- 小型車:23㎡(1車両あたり)
例:大型車5台、小型車3台の場合
大型車5台×38㎡+小型車3台×23㎡=259㎡
もし、車庫の面積に余裕がない場合は車両配置の平面図も提出しなければなりません。
手順3.書類を提出する
管轄の運輸支局に必要書類を提出します。
提出部数は本運輸局に1部、管轄運輸支局に1部の合計2部が必要です。また、申請者の控えとして1部保管しておくことをおすすめします。
手順4.認可
管轄の運輸支局に提出した後、内容の確認が行われます。すべての要件に満たしていれば、基本的に受理・認可されます。
ただし、記載内容に不備があったり、必要書類が足りていなかったりする場合は再提出となるため、事前に確認しておきましょう。
まとめ
貸切バス事業を営む事業者が事業用自動車を増車する場合、管轄の運輸支局にて増車手続きを行う必要があります。手続きには事業計画変更認可申請書兼届出書様式を記入しなければなりません。
また、書類作成自体に時間がかかるものではありませんが、任意保険や運転者名簿などのコピーを提出する必要があり、準備に時間がかかってしまうことがあります。
そのため、増車が決定したら、余裕を持って必要書類の準備を進めていきましょう