一般貨物自動車運送事業を始めるには国土交通大臣の許可を受けなければなりません。そこで、今回は一般貨物自動車運送事業(トラック運送業)の許可申請方法や認可までの流れについて解説していきます。
SBサポートでは新規許可申請に関する課題を運送業に強い行政書士にご相談いただけます。調べてみたけどよくわからない、専門的なアドバイスが欲しいなど、御社のお悩みにあわせた解決案を模索・提示させていただきます。
一般貨物自動車運送事業とは?
一般貨物自動車運送事業とは、貨物自動車運送事業法第2条第1項で「他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。次項及び第七項において同じ。)を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のものをいう。」と定められています。
つまり、他の人から運送費をもらい、トラックで荷物を運送する仕事ということです。
そのため、運賃が発生しない荷物の運送は一般貨物自動車運送事業には該当しません。たとえば、自社製品を小売店などに納品したり、工場間や支社間で荷物を移動したりなど、他の人からの依頼が無い場合、もしくは運賃が発生していない場合は一般貨物自動車運送事業には該当しません。
一般貨物自動車運送事業の許可要件
一般貨物自動車運送事業を始めるには国土交通大臣の認可を受ける必要があります。そして、認可を受けるには8つの要件を満たしておく必要があります。
1.お金(必要資金の証明)
一般貨物自動車運送事業との認可要件の1つがお金です。特に必要資金の準備には時間がかかる場合が多いため、余裕を持って準備を進めていくことをおすすめします。
さらに、一般貨物自動車運送事業を運営していくにあたり、会社の設立にかかる費用(※資本金)と一般貨物自動車運送事業を開業する費用(※運送業開業資金)を分けて考えることがポイントです。
【資本金】
資本金というのは会社を設立するために必ず必要になるお金です。資本金の金額については特に決まりはありませんが、一般的には300万円~500万円に設定される法人が多いです。もちろん、1円や100円の資本金にすることも可能ですが、1円の資本金で会社を設立する方はほとんどいないでしょう。
【運送業開業資金】
一方、運送業開業資金については資本金とは異なり、これから運送業を営むために必要な資金を指します。運送業開業資金の金額については事業規模や事業状況によって大きく異なります。たとえば、トラックの台数や新車か中古車によっても変わります。さらに、事務所や駐車場を借りるのか、所有地で開業するのかによっても変わってきます。
運送業開業資金の準備を進めるには、トラックの台数や事務所の賃料などをしっかりとシミュレーションしておくことが大切です。
2.営業所と休憩室を用意
一般貨物自動車運送事業の認可を受けるには営業所と休憩室の設置が義務付けられています。しかし、営業所と休憩室の設置にも細かい要件が定められています。
要件1.使用権限の証明
営業所と休憩室の使用権限を証明する必要があります。つまり、使用権限が証明できなければ認可を受けることができないのです。
そのため、ネットカフェやホテルなど、一時的な利用にする施設は営業所や休憩室として認められません。
また、使用権限を証明するために、賃貸契約の場合は賃貸借契約書を提出しなければなりません。ただし、賃貸借契約書に記載の契約期間が2年以上なければ使用権限が認められないため、注意が必要です。契約期間が2年未満の場合、契約期間満了時に契約が自動更新されることを証明できれば、問題ありません。
一方、営業所や休憩室が自社(自己)所有の場合は賃貸借契約書ではなく、登記簿の提出が必要となります。
要件2.建築基準法に適合
建築基準法や消防法などに抵触していないことが条件となります。「建築基準法に適合」については、特に証明書類などを提出する必要はありませんが、申請時に誓約書を書く必要があります。
要件3.市街化調整区域外
市街化調整区域では建物の建築が許されていません。つまり、市街化調整区域に新たに営業所や休憩室として建物を建てることができないのです。
物件がある地域が以下の地域にないことが条件となります。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
要件4.備品の準備
営業用の電話やイス、テーブルなどの備品を設置する必要があります。その他、事業運営に必要な備品の準備も必要となるため、あらかじめ何が必要か確認しておきましょう。
また、備品の写真を撮っておくようにしましょう。管轄の運輸支局によっては、写真を提出しなければならないこともあります。
要件5.駐車場からの距離
営業所と休憩室の場所は事業用自動車を保管する駐車場から直線距離で10km以内でなければなりません。ただし、地域によって異なる場合があるため、管轄の運輸支局に確認しておきましょう。
3.駐車場(車庫)を用意
事業用自動車を保管する駐車場を用意しなければなりません。駐車場の基本的な要件は営業所と休憩室の要件を同じですが、駐車場出入口や大きさなどの要件をクリアしなければ認可が下りないので注意が必要です。
要件1.駐車場の出入り口
出入口が交差点の角にないことが要件の1つとして定められています。その他、駐車場の出入口が道路の曲がり角や横断歩道から5m以上離れておく必要があります。
要件2.駐車場の大きさ
事業用自動車が十分に駐車できるスペースを確保しなければなりません。たとえば、車両と車両の間隔が50cm以上確保できる広さ、車庫と車両の間が50cm以上確保できる広さなど、駐車場の大きさについても細かい要件があります。
要件3.駐車場面積の規定
2019年11月の法改正によって、駐車場面積の規定が厳格化されました。
駐車場に事業用自動車をすべて駐車した際に駐車場面積の90%を超える場合は要件を満たさないと判断されてしまい、認可を受けることができません。そのため、駐車場の広さはある程度余裕を持つ必要があり、要件を満たす駐車場候補地を選ぶ必要があります。
4.5台以上のトラックを用意
事業用自動車を5台以上用意する必要があります。要件を満たす事業用自動車とは一般的なトラックの他、ハイエースなどでも問題ありません。ただし、軽トラックは台数に含むことはできないため、注意が必要です。
5.経営者としての条件を満たす
過去に一般貨物自動車運送事業の許可取り消し処分を受けている場合は経営者条件を満たさないため、新たに認可を受けることはできません。また、事業所の役員の内、1名以上が法令試験に合格している必要があります。
6.運行管理者を選任
運転者以外の従業員から1名以上の運行管理者を選任する必要があります。運行管理者は、ドライバーに点呼を行い、健康状態やアルコール検査など、運行前の確認を行うことが主な業務です。
【関連記事】
運送業(トラック事業)の運行管理者の選任条件や必要人数、届出方法を解説
7.整備管理者を選任
運行管理者以外にも整備管理者を選任しなければなりません。整備管理者を選ぶ基準としては、他社を含む整備管理経験が2年以上ある人から選任する必要があります。ただし、自動車整備士免許を持っている場合は整備管理経験がなくても専任することができます。
8.従業員を雇う
一般貨物自動車運送事業を運営する際、常任の運転者(常時選任運転者と呼ぶ)を雇う必要があります。つまり、日雇い労働者や2ケ月以内の契約社員は常任の運転者とは認められず、一般貨物自動車運送事業の従業員要件を満たさないということです。
一般貨物自動車運送事業の認可までの流れ
一般貨物自動車運送事業の要件を確認したら、実際に申請までの流れを理解していきましょう。
手順1.必要な書類を準備する
まず、申請に必要な書類を準備していきます。駐車場や事務所の賃貸借契約書や登記簿、トラックや保険の見積書、そして残高証明書などを用意しなければなりません。さらに、駐車場の配置図や図面なども必要になることがあるため、あらかじめ準備しておきましょう。
手順2.法令試験を受験する
事業所の役員の内、1名以上が法令試験に合格しておく必要があります。
試験時間 | 50分(管轄の運輸支局によっては60分) |
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問題数 | 30問(管轄の運輸支局によっては40問) |
試験範囲 |
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手順3.許可が下りる
申請書や提出書類に問題がなければ、申請から3~5ヶ月を目途に事業許可証が交付されます。
手順4.運行管理者と整備管理者の選任届
事業許可証が交付されたら、運行管理者と整備管理者を選任し、管轄の運輸支局に選任届を提出します。
手順5.社会保険・雇用保険に加入
実際の事業を始める前に、従業員の社会保険や雇用保険の加入が必須となり、加入状況を記した書類を提出しなければなりません。
手順6.運輸開始前の確認届
運輸開始前に従業員の社会保険や雇用保険の加入証明書や運転者の運転免許証などを提出します。
手順7.事業用自動車等連絡書発行
運輸開始前の確認届の提出が済んだら、事業用自動車等連絡書を発行してもらいます。事業用自動車等連絡書がなければ、事業に使用するトラックのナンバーを変更することができないため、必ず受け取るようにしましょう。
手順8.車検証書換え(必要であればナンバー取換えも)
事業用自動車等連絡書を受け取ったら、車検証の書き換えを行ってもらいます。もともとの車検証区分によって手続きは異なりますが、区分を「貨物」に変更したり、白ナンバーから緑ナンバーへと切り替えたりする手続きが必要となります。
手順9.運輸開始届出
すべての手続きが完了したら、実際の事業をはじめるまえに運輸開始届を提出します。
手順10.運賃料金設定届
事業所の運賃料金を定めた後、30日以内に運賃料金設定届を管轄の運輸支局に提出します。運賃料金設定届には事業所の住所や代表者の氏名などを記入する必要があります。その他、運賃の種類や運賃の適用方法についても詳細に書かなければなりません。
手順11.トラック協会適正化指導員による初回指導
運輸開始届を提出してから、3ヶ月以内にトラック協会適正化指導員による初回指導が実施されます。また、申請書類と大幅に異なることが発覚した場合は指導員から運輸支局に報告され、運輸支局より指摘される可能性もあります。そのため、申請書類を作成する際は虚偽の記載は一切しないようにしましょう。
手順12.新規許可申請完了
以上ですべての手続きが完了です。大きな事故やトラブルが無い限り、事業許可が取り消されることはありません。しかし、虚偽の報告書や申請書を提出したり、重大な過失のある事故を起こしたりすると、事業許可が取り消されるため、注意しておきましょう。
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以上が一般貨物運送事業(トラック運送業)の始め方となります。正しい手順を踏めば個人でも取得は可能ですが、普段の業務をこなすのに忙しかったり、細かな読解や計算が苦手だとやり直しも重なり、結果的に認可までに膨大な時間がかかるケースもあります。
そのような問題を起こさないためにも、専門家である行政書士に依頼することもおすすめです。
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