赤帽やAmazon Flex(アマゾンフレックス)など、個人で運送業を始める場合は黒ナンバーを軽自動車に取り付ける必要があります。
しかし、そもそも目につく機会や使う機会が少ないため、今回初めて詳しく黒ナンバーについて調べている方も多いはず。
そこで、このページでは「黒ナンバー」とは一体何なのか?緑ナンバーとの違いは何か?取得するまでに必要な手続きや書類は何なのか?など基本的な情報をお伝えしたいと思います。
黒ナンバーとは?
黒ナンバーとは、営業用の軽自動車に使われるナンバープレートのことです。個人・企業問わず、他人からの依頼で有償で自動車を使用して運送事業を行う際に使用します。
【こんな時に使う】
- 1人規模のトラック運送業
- 佐川急便の下請け
- Amazon Flex(Amazonの配達業務)
上記のような事業を行う際に使用すると考えて問題ありません。
緑ナンバーとは何が違うの?
メリット1.取得が簡単で、運輸支局への届出だけで済む
黒ナンバーは、取得までに多くの時間がかからないというメリットもあります。提出すべき必要書類がそろっていれば、最短1〜2日程度で黒ナンバーの取得が可能です。
一方、緑ナンバーである一般貨物自動車運送事業の許可を取る際には、平均で6ヶ月ほど必要になることを考えると、非常に短い時間で開業が行えることが分かります。
関連記事:一般貨物運送事業(トラック運送業)の始め方(新規許可申請の方法)【行政書士監修】
メリット2.トラック1台、ドライバー1人でも始められる
黒ナンバーの申請は、車両1台からでも可能となっています。複数台の車を事業用に準備する必要はないため、開業にかかるコストがその分抑えられます。個人事業で一から運送業をはじめる人にとっては、車両台数のハードルが低い点はメリットです。
黒ナンバー | 緑ナンバー | |
---|---|---|
車両 | 軽自動車のみ | 軽自動車以外の貨物車や旅客車 |
台数 | 1台から | 5台以上 |
運行管理者、 整備管理者の選任 |
必要なし※ | 必要あり |
ドライバー | 常時選任運転者以外も〇 | 常時選任運転者のみ |
車両の積載量 | 制限あり | 制限なし |
車両の運搬距離 | 制限あり | 制限なし |
※1営業所につき車両を10台以上保有する場合は必要
上記で比較してもわかるように、緑ナンバーの場合は最低でも5台必要なります。
メリット3.税金が安く、経費として計上できる
黒ナンバーの車両は緑ナンバーよりも自動車税や重量税が軽減されます。特に自動車税は毎年かかる税金であるため、金額の差が家計および事業の運営に大きく影響します。
黒ナンバー | 緑ナンバー | |
---|---|---|
自動車税 | 3,800円 |
|
自動車重量税 | 5,200円 |
|
登録免許税 | 0円 | 12万円 |
※:自動車税と自動車重量税は年間での支払い額
黒ナンバーは、初年度検査年月が平成27年4月以降の場合、年額3,800円の自動車税がかかります。
一方、緑ナンバーの車両は積載量に応じて自動車税が変動します。例えば、積載量が4トン〜5トンの場合、年額18,500円の自動車税がかかります。
よって、同じ積載量でも、黒ナンバーの方が年間14,700円も自動車税が安い計算になります。
自動車重量税についても同様に考えると、黒ナンバーの方が7,800円も自動車重量税が安くなる計算です。
また、緑ナンバーの場合は取得時に登録免許税が発生しますが、黒ナンバーの場合は必要ありません。何かと事業開始時は費用がかかりますから、12万円が必要なくなるのは助かりますよね。
メリット4.私用で利用できる
黒ナンバーは、営業用自動車であっても一般の自動車と同じように、私的利用できます。
私的利用とは、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを意味します。
【私的利用できる例】
- 買い物やレジャーなどの趣味のために車を使うこと
- 友人や家族との移動のために車を使うこと
- 病院や役所などの用事のために車を使うこと
- 学校や習い事などの教育のために車を使うこと
- 災害や緊急事態などの場合に車を使うこと
一方、緑ナンバーについては私的利用を認められていません。適用されるのは貨物自動車運送事業法です。
念のため正確にお伝えしておくと、貨物自動車運送事業法に緑ナンバーの私的利用を禁止したり罰則があるような記載は見当たりません。
しかし、運輸局に問い合わせても「NG」と回答されますし、就業規則に私的利用の禁止を記載する会社が多いため、私的利用はできないものと考えておいた方がいいでしょう。経営者であれば営業停止や罰金になるようなトラブルは避けたいでしょうし、ドライバーであればクビになる可能性を自ら作りたくはないでしょうからね。
デメリット1.荷物の積載量や積載物などが制限される
黒ナンバーの車両は、軽自動車の規格に合わせて作られているため、積載量や積載物などに制限があります。
黒ナンバー | 緑ナンバー | |
---|---|---|
最大積載量 | 350kg | 1t以上(車種による) |
積載物の制限 | 車両の長さ(幅)の10分の2まで | なし |
高さ | 地面から3.8m以内 | なし |
現行の道路交通法における軽トラックの最大積載量はメーカーによらず350kgです。また、積載物の長さや幅にも制限があり、車両の長さの10分の2の長さを超えたり、車両の幅の10分の2の幅を超えたりすることはできません。これらの制限を超えると、罰則の対象となる可能性があります。
では、具体的にどのようなケースで最大積載量が350kgを超えたり、車両から貨物がはみ出るかというと、
- 引っ越し:家具、家電、衣類、食器など、一度に運ぶと重量がかなり増える可能性があります。
- 建築資材の運搬:砂、石、セメント、レンガなどの建築資材は、一度に大量に運ぶと重量が増えます。
- 農業:収穫物や肥料など、農業に関連する物品を運ぶ場合も重量が増える可能性があります。
などが考えられます。
特に赤帽として事業開始を計画している場合は、上記の引越しに該当しますので、注意しておいた方がいいでしょう。場合によっては緑ナンバーへの切り替えも検討が必要です。
デメリット3.任意保険料が高い
黒ナンバーは専門的な自動車保険はありません。一般的な乗用車と同じ感じで任意保険に加入する必要があります。
ただし、一般的な乗用車に比べると、黒ナンバーは走行距離が長く、かつ物損への加入もほぼ必要となりますので、当然保険料も高くなります。
また、特約制度がないことも保険料が高くなる要因の一つです。
以上のことから、保険料は一般的な乗用車の2~3倍するケースが多く、金額としては月額1万円~15,000円かかると思っておいた方がいいでしょう。
黒ナンバーの取得方法
手順1.営業所と車の保管場所を確保する
黒ナンバーは指定される要件をクリアしておく必要があります。そのため営業所・休憩施設・車庫を先に保有する必要があります。自己所有または賃貸の自宅内に営業所と・休憩施設を設置することも可能です。
営業所と休憩・睡眠施設 | 都市計画法上の市街化調整区域以外に設置することが必要です。自宅を営業所と休憩・睡眠施設として登録することも可能です。ただし、市街化調整区域にある場合、建物を事務所として利用できると定められた場所であることが条件です。休憩・睡眠施設については、「乗務員が有効に利用できる適切な施設」という条件があります。 |
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車庫 | 営業所から半径2km以内に設置することが必要です。望ましいのは営業所との併設。また、事業に使用するすべての車を駐車できるスペースが必要です。 |
手順2.軽貨物車を確保する
当然ですが車も用意する必要があります。要件は車検証での用途が「貨物」となっている軽トラックや軽バンなどの軽貨物車を1台以上です。
手順3.運輸支局に必要書類を提出する
【新規で取得する際の必要書類】
- 貨物軽自動車運送事業経営届出書(提出用・控え用の計2部)
- 運賃料金表(提出用・控え用の計2部)
- 事業用自動車等連絡書
- 車検証(新車の場合は、車台番号が確認できる書面(完成検査証など)) ※コピー可
手順4.車検証を書き換えるために必要書類を軽自動車検査協会に提出する
手順3で運輸支局から受理印が押された「事業用自動車等連絡書」が発行されます。この書類は黒ナンバーへと変更するために必要な書類です。
軽自動車検査協会に提出し、手続きを行えば、黒ナンバーに変更完了です。
軽自動車検査協会は運輸局と同じ敷地内に設置されているケースも多いため、手順3のタイミングで案内がある可能性もあります。
手順5.軽自動車検査協会で車検証と黒ナンバーを取得する
軽自動車検査協会で新しい車検証をもらい、新しい車検証に記載されているナンバーをOCRに書き込んで提出します。その後、黒ナンバーをもらって1,600円を支払います。