先日もお伝えしたとおり、中型バスの無人自動走行を目的とした行動実証実験事業が始まっています。中でも、最近のトピックとして、相模湖リゾートで行われている、ハンドルがない自律走行のシャトルバスを語らずにはいられません。
さがみ湖リゾート プレジャーフォレストで行われている、シャトルバスの自律走行実証実験はどのようなものなのか、また今後バス業界にどのような影響を与えるのか解説します。
さがみ湖リゾート プレジャーフォレストでは、ハンドルのない自律走行を行うシャトルバス運行の実証実験が開始されており、「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」という名称でシャトルバスが運行しています。このNAVYA ARMAは、相模湖リゾート・富士急行・SBドライブの3社が実験に参加しているもので、実験期間は短く2019年11月25日から2019年12月1日までです。
NAVYA ARMAの運行場所として選ばれたのが、遊園地とアウトドア施設の複合施設であるさがみ湖リゾート プレジャーフォレストであり、入場口から園内テーマパークのパディントン タウン入り口までの約250mを実験的に走行しています。乗車料金は無料であり、一般人でも実験に参加でき、乗り降りを体験することができる実験をしている1週間であり、来園客には特別な1週間にもなるでしょう。
乗車料金は無料ですが、実証実験段階のため試乗に関する同意書への署名や親権者の同意などが必要となります。これは、仮に事故が起こってしまった際の対策であり、特段珍しいことでもありません。
NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)には大きな特徴があり、ハンドルがありません。一般的なバスを含む車両であれば、ついていて当然のハンドルですが、NAVYA ARMAにはタイヤを操作するハンドルがないのです。これが、自律走行バスの最たる特徴と言えるでしょう。
当然、運転手も緊急時以外には運転に携わることがなく、運転業務は平時であれば一切触れることがありません。
また、NAVYA ARMAは、世界各地で走行実績を積んでいるフランスNavya社の車両であり、人の往来も激しいさがみ湖リゾート プレジャーフォレスト入り口からパディントン タウン入り口までの約250mを、上手に人や物を避けながら進んでいきます。
NAVYA ARMAの運行は、自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」でリアルタイムに決められています。しかし、完全に自動とはなっておらず、現状は遠隔監視者が車両内とバス停に設置されたセンサーを元に、出発時刻を設定している段階です。
今後、自律走行バスの技術がより進歩すれば、より人力での監視も少なくなり、センサーの反応を元にAIが自動で出発時刻を設定し、緊急時以外は人間の力を借りることがない日も近いかもしれません。
NAVYA ARMAが衝突しない理由は簡単です。現状、実証実験段階ということもあり、約250mという短距離しか走行しない、また人の往来もありますが、従来の衝突防止装置同様に人の反応があれば停止する、さらに低速でしか走行しないという3点が挙げられます。
そもそも、今回NAVYA ARMAが実証実験されているさがみ湖リゾートでは、一般道のように数十キロのスピードを出す必要がありませんので、ハンドルがなくドライバーが常時座って補助を行わなくとも、安全性を高く保つことができるのです。
ですが、絶対に事故を起こさない保証はありません。そのための、試乗に関する同意書や親権者の同意であり、緊急時に対応するドライバーの乗車はいまだに欠かすことができない段階と言えます。
即公道で同様の車両が走り回るのはムリがあるNAVYA ARMAの性能は高いですが、同様の車両が即公道で実証実験をするために走り回り、自律走行バスが一般化するのにはムリがあるでしょう。その理由として、
これだけ見ても、いかにハンドルのない自律走行バスの運行が難しいか、理解できるでしょう。たとえば、さがみ湖リゾート プレジャーフォレストでは基本的に障害物は往来する人と道路上に置かれた物ですが、公道では人だけでなく自転車やバイク、スピードを出した車もいます。そして、落下物がある場合や、天候によっては凍った路面や冠水している場所も出てくるため、より高度な自律走行ができないと、非常に危険なバスに豹変してしまいます。
そのため、現状すぐに公道で同様の車両が走り回るのにはムリがあり、実証実験が修了しどのバス業界関係者でも、自律走行バスを手に入れ公道で自律走行させる日は、まだ遠いと考えられるでしょう。
自律走行バスが本格化し、人間の運転手でなく自律走行が一般的になるのはまだ先のことです。しかし、実証実験にはできるかぎり積極的に参加し、補助を受けながら自律走行バスがどのようなものなのか、実際に体験しながら準備することが大切になってきます。
自律走行バス導入は安くはありません。ですが、一度導入してしまえば、運転手をほとんど使うことなく、安心快適にお客様を乗せて運行できるため、導入は早いに越したことはありません。そのためには、早いうちから実証実験に目を向けるだけでなく、実際に実証実験を行う事業者として、バス業界をけん引していく力も大切になっているのです。