運送業は数多くある許認可の中でも譲渡することができる認可です。建設業認可などは他者に譲渡することはできませんが、運送業の場合は所定の手続きを行うことで認可を譲ることができます。
そこで、本記事では運送業譲渡譲受について紹介していきます。
2017年2月 行政書士試験に合格。2017年10月 特定行政書士研修を修了し考査に合格。運送業者を中心に関与する。
運送業を譲渡するケース
運送業を譲渡するケースには様々な理由があります。
1.個人事業主が法人成りする場合
これまで個人事業として運送業を営んでおり、事業収入が上がったことなどから法人化をする際は運送業の譲渡が必要となります。この場合、実質的な代表者が変わらないとしても個人事業から新たな法人へ事業が渡るため、譲渡譲受の手続きが必要となります。
2.会社を買収された場合
他者(個人、法人問わず)に買収された場合は事業そのものが譲渡されるため、譲渡譲受の手続きを行わなければなりません。
3.会社を売却する場合
会社売却を行う場合は譲渡譲受を行います。買収された場合と同様、すべての経営権とともに事業が譲渡されるため、新たな事業者に運送業の譲渡譲受を行う必要があります。
運送業譲渡譲受認可申請の手続きの流れ
運送業譲渡譲受認可申請を行う場合は譲渡先の営業所を管轄する運輸局にて提出しなければなりません。たとえば、大阪の事業者が東京の事業者に譲渡する場合は近畿運輸局ではなく関東運輸局で手続きを行わなければなりません。
基本的な手続きについては新規申請時と同じですが、譲渡譲受の場合は登録免許税が免除されます。登録免許税については新規認可時にすでに支払っており、認可そのものが別の事業者に移るだけなので、譲渡譲受の際は免除されるという仕組みです。
手順1.申請書類の作成と提出
譲渡人と譲受人との間で事業譲渡譲受契約を結ぶ必要があります。特に決まったフォーマットはありませんが、事業譲渡については専門的な用語が多いため、弁護士や司法書士などの専門家に任せることが一般的です。
弊社でも営業権の譲渡譲受認可申請サポートを行っております。若くてやる気のある行政書士が対応いたしますので、スピーディー&丁寧、そして格安で申請書類をお作りできます。
詳細は行政書士業務支援に関するページをご覧ください。
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(ページ中部の「都度報酬」の欄をご覧ください)
そして、事業譲渡譲受契約を結んだ後、申請書類を作成して管轄の運輸局に提出します。
【提出書類】
- 経営許可申請書の鑑
- 事業譲渡譲受契約の写し
- 事業計画
- 所要資金および事業開始に要する資金の内訳
- 車両費、土地費、建物費、機械器具および什器備品費の明細
- 車両明細一覧表
- 事業用自動車の使用権限を証する書面
-自己所有:車検証の写し、支払明細書
-リース:車検証の写し、リース契約書
-購入:車検証の写し、売買契約書の写し、分割払いの場合は割賦支払明細書 - 運転資金、保険料、その他創業費等の明細
- 残高証明書の原本
- 休憩睡眠施設の概要を記載した書面
- 営業所、自動車車庫、休憩睡眠施設の案内図、平面求積図、配置図
- 営業所、自動車車庫、休憩睡眠施設の使用権限を証する書面
-自己所有:不動産登記簿謄本
-賃貸物件:賃貸借契約書の写し - 建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令に抵触していない旨の誓約書
- 車庫前前面道路の道路幅員証明書
- 定款
- 履歴事項全部証明書
- 直近の事業年度貸借対照表
- 役員名簿
- 役員の履歴書
- 申請者、常勤役員の欠格事由に該当しない旨、行政処分を受けていない旨の誓約書
- 管理運営体制の組織図
- 安全統括管理者の就任承諾書
- 運行管理者資格者証
- 整備管理者の有資格者証または管理者手帳
- 整備管理者の就任承諾書
- 運転者予定名簿
- 運転免許証の写し
- 運転者の就任承諾書
- 法令の基準に適合する任意保険や共済に加入する旨の誓約書
- 健康保険および厚生年金に係る新規適用届出の写し(許可取得後に社会保険へ加入する場合は誓約書)
- 労災保険、保険関係成立届出の写し(許可取得後に社会保険へ加入する場合は誓約書)
- 安全投資計画
- 整備サイクル表
- 事業収支見積書
- 健康診断費用の見積書
- 車両のリース契約書
- その他安全確保のための投資費用が記載されている見積書
- 直近1事業年度分の賃借対照表
- 損益計算表
上記はあくまでも最低限の書類となります。場合によってはその他の資料や書類の提出を求められる場合があります。
手順2.法令試験を受験
新規許可と同様、代表者が法令試験を受験しなければなりません。ここで合格しなければ再受験となってしまい、運送業譲渡譲受が行われないため注意が必要です。
⇒ 貸切バスの新規認可の法令試験を解説 | 概要、出題範囲について
手順3.預金残高証明書の提出
法令試験に合格すると引き続き審査が進められます。そして、運輸局より任意で選ばれた日付の預金残高証明書の提出を求められます。
残高証明書が必要な理由として、運送業を行う上で、事業開始に要する資金の100%以上を自己資金で確保しておかなければならないという条件があるからです。
つまり、運送業が譲渡された新事業者が運送事業を行う上で必要な資金があるかを確認しているのです。
手順4.認可証の交付
問題なく審査が完了すると認可証が交付されます。
認可証の交付から事業開始までに必要な準備
譲渡譲受の認可証が交付されても、すぐに事業を開始できるわけではありません。事業開始までに下記を行う必要があります。
- 営業所、自動車車庫の整備
- 休憩睡眠施設の確保
- 事業用車両の購入またはリース契約
- 点呼記録簿の整備
- 運賃料金、運送約款の刑事
- 安全管理規定、運行管理規定、整備管理規定の整備
- 就業規則、労使協定の作成
- 社会保険、労働保険の加入
- 運転者適性診断および健康診断の受診
- 任意保険または共済の加入
すべての準備が完了し、運輸局に下記の必要書類と譲渡譲受終了届を提出することで事業用ナンバーが交付されます。新しい事業用ナンバーが交付され車両に取り付けることができたら、事業を開始することができます。
【必要書類】
・任意保険の加入状況がわかるもの
・運行者の社会保険の加入状況がわかるもの
・その他運輸局に提出が求められたもの
また、事業を開始した段階で速やかに運輸開始届を提出しなければならないので注意しておきましょう。
適正化事業指導員の巡回指導
譲渡譲受終了届を提出してから3ヶ月以内に適正化事業指導員の巡回指導があります。
指導時には申請時の内容に誤りがないかを中心にチェックされます。特に営業所や自動車車庫、車両状況や有資格者の在籍については厳しく確認されます。
また、運行管理や整備管理がしっかりと行われているかの確認も行われるため、運転者台帳や整備台帳については毎日確実に記入することを心がけましょう。この段階で申請時に虚偽の内容が含まれていると発覚した場合は認可の取り消しになります。
また、運行管理者や整備管理者がいなかったり、車両の点検が適切に行われていなかったりすると判断された場合は行政処分の可能性もあるため、注意しておきましょう。
まとめ
運送業譲渡譲受は個人事業主が法人成りした場合、会社が買収された場合、もしくは会社を売却した場合などに必要な手続きです。譲渡譲受手続きを行うことで譲渡された側は継続して運送業を営むことが可能です。
しかし、提出する書類や流れについては新規認可とほぼ同じであるため、時間と労力がかかってしまいます。また、譲渡譲受終了後の第一回目の適正化事業指導員による巡回指導は厳しく行われるため、適切な方法で事業運営を行わなければなりません。
譲渡譲受後もしっかりと運送事業ルールを守り、適切な事業運営を心がけましょう。